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LogoType47の製造台数について


Photo01

 ヨーロッパのレーシングバージョンであるtype 47については、これまで雑誌(Car Magazine No.201他)や書籍等で取り上げられる機会も多いため、その仕様やレースでの戦績等については、案外知る機会が多い。しかし、筆者は正確な製造台数は一体どれ位であったのかについて、最近、特に興味を持つようになり、各種書籍、雑誌等を渉猟した結果、先のCar Magazine等で知られている台数(55台)よりも遙に少なかったのではないかと思うに至った。

 筆者が最近、生産台数について常々疑問を抱くようになり、しかもその特定作業の結果をいち早くクラブ員各位にお伝えしたいと思うようになったのは、近年、雑誌の特集記事に取り上げられたり、或いは、雑誌の「売りたし」欄に掲載される47は、どれも製造番号(Serial Number略してS/Nと表記する)が、55番以降だからである。ロータスについて、その製造番号で真贋を論ずるのは、意味の無いことかもしれないが、この欄で、敢えてほぼ正確な製造台数を特定するのは失当との誹りを受けぬであろう(ロータス社はその製造番号の管理については、フェラーリ、ポルシェに比しかなり杜撰であった。このため、先のType 23に見られるような混乱する事態が生じている)。また今回、台数特定に当たっては、現在入手しうる限りのロータス関係書籍に拠ったことをお断りしておく。

Photo02 最近(といっても1997年)、久々にヨーロッパに関する書籍が刊行された。否、ヨーロッパだけに関する書籍はこれまでで初めてであるかもしれない。書籍名は「The LOTUS EUROPA derivatives & contemporaries」で、著者自身がヨーロッパのオーナである。この書籍の71ページから約10ページに渡って47のことが記載されているが、その中で台数および47レプリカについて次のように述べているくだりがある。

 「最近とみにレプリカが流行っているが、不幸にして47の場合も例外ではない。47はこれまで常にレース用として、またロード用としてコピーの対象となってきたため、ダグナイ(Doug Nye=英国の著名なモータジャーナリスト)の秀作「The Story of Lotus 1961-1971」によれば、最初の(グループ4ホモロゲーションに必要な)55台よりも遙に多くの台数の47が製造されるに至っているという。しかし、この55台という数字はしばしばロータス研究家により疑問視されており、グループ4規則では規定生産台数を50台としているが、実際の製造台数はそれ以下であると思う。」

 また同書によれば、FIAの国際スポーツコードJ項によるロータスMark 47のRAC/FIA Homologation Paperは、メーカ名をLotus Components Limitedと記載している。これは非常に重要な事実であって、当時の資料を繙けば、レースの参戦はロータスコンポーネント、F1はチームロータス、一般市販量産車はロータスカーズと、それぞれ担当が分かれていたことが確認できる。このことと関連して、英国クラブロータスの会長であり、またクラブロータスニュースのエディタであり、しかもかつてロータス社において販売マネジャを努めた、生粋のロータス人であるグラハムアーノルド(Graham Arnold)氏は、その著書「Lotus Buyer's Guide」において、「ロータス47のシャシプレートはLotus Components Limitedであり、ロータスヨーロッパのそれはLotus Cars Limited, Norwich, NorfolkもしくはLotus Cars Limited, Cheshunt,Englandと記載されていなければならない」と断言している。また同書には「ヨーロッパに関しては、チャップマンは純粋なレース用として販売する前にLotus Componentsによる徹底した見直し作業を行うべきであると主張していた。」との記載がある。スポーツレーシングカーは、ロータスコンポーネントが製造者であることを裏付けるものである。

 1986年に刊行された「LOTUS THE ELAN, CORTINA AND EUROPA」も、47について数ページを割いて、S1との差異やレース戦績等について説明している。これらは他の書籍と大差ないものであるが、47の台数に関するくだりでは、最初の50台の47のうち約25台が現存しているとしている。また(大型ブレーキと強化型シャシの)47Aは4台が依然として存在しているとしている。

Photo03 1990年に刊行された「Lotus: All the Cars」は、ロータスのマーク1から102までを解説した、既に古典的定評を確立した書籍であるが、47の台数について興味ある内容を伝えている。その部分を訳出してみよう。
「グループ4のホモロゲーションのために、ロータスは、50台分の部品を準備した。正確な台数は不詳であるが、実際に完成した台数は約30台であると思われる。(中略)長距離イベントでの47の弱点を克服するために、シャシーとブレーキを強化し、さらに(S2と同様に)取り外し可能なボディシェルと調節可能なシートを搭載した47Aが開発された。」

 最後に、Type 47について独立の章を設け、47の台数に加え、弱点等を含め、最も興味ある内容を伝えるのが、1980年刊行の「The Lotus Elan and Europa」である。以下に一部を引用する。
「47はFIAグループ4カテゴリでレースを行うために作られたスポーツプロトタイプであった。このクラスへの参加資格を得るためには50台を製造するか、少なくとも量産を行うことを規定する必要があった。このためロータスの子会社であるロータスコンポーネントはかなりの数の47のために必要な部品を取得し、レースへのファクトリの参加用にチームカーを制作し、また多くのキットが外部コンストラクタにより制作された。47がFIAによりホモロゲートされるために充分な量のコンポーネントが作られたことにFIAが満足したことは疑う余地は無く、それが偽りだったとは言いたくない。しかしそれにも関わらず、私は50台すべてが完成したとは思えない。実際には25台から30台位が参戦したに過ぎず、他は恐らくロードユース用に改造されたのであろう。(中略)47のウィークポイントはブレーキであった。レースではブレーキが直ぐにフェードしてしまい、10ラップが絶対的な限度であった。またシャシーにもクラックが入りやすいという弱点があった(特にエンジン付近とフロントサスペンション部分)。それにサスペンションも注意を要したし、ラバードーナッツがギヤケースに近すぎて擦れるという問題も発生した。」

 これまでの考察から判断すると、おそらく完成車として工場をラインオフした47は30台位だとしても間違いではないと思う。ここ20年間に雑誌等に掲載された47の中でシャシ番号を確認できた3台は、すべてNo.60以降であり、しかもシャシープレートはLotus Cars......であった。この事実を読者諸兄はどのように解釈するであろうか。

Photo04 47の発売直後、日本にも2台が輸入され、そのうちの一台は高野ルイの操縦により69年日本GPに参戦している(もう一台はマカオGPにおいてサーキットの露と消えている)。幾多の戦いの後、この47は輸入した会社の倉庫で長年眠りに就いていたが、10年程前に某ロータスショップの手に渡り、最近、レストアなってレースで目ざましい戦績を残しているのは、ロータスフリークの遍く知るところである。この戦績は、いかに47のポテンシャルが高いかを如実に示している。この47について、先日、筆者がオーナS氏にS/Nを確認したところ、No.24であるとのことであった(残念なことにシャシープレートはレストアの最中に紛失してしまった(!)という)。また本物ならではの興味深い事実として、ミッション(FT200)やボディパーツ(例えばドアやヒンジ等)に「47」の刻印があることも判明した。

 さて、これまで色々と書いてきたが、まだまだ調べたりないことも沢山あり、書き足りない部分もある。しかし、47を雑誌等の売買欄で見つけたときには、以上書いてきたことが、何らかの判断材料になるのではないかと思う。筆者自身も国内でまだ未調査の47もあるし、何といっても本物(?)の47に触れた機会が少ない点は、やや勉強不足であることを認める。どうぞクラブ員諸兄の忌憚のない意見を拝聴したいと思う。
文責:加藤登志夫



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